SARS講習会

5月18日、NDCにおいて歯科医師向けのSARS講習会が開かれました。

現在シンガポールではSARSの新たな感染例はみられず、制圧宣言が出されるのは時間の問題です。しかしながら制圧宣言が出されても、これでもうSARSは発生しないと言うことではありません。グローバルな社会になった今、いつどこからSARS感染者が現れるかは分からないのです。私たちがSARSに対して確たる行動がとれる、ということが重要です。あらたなSARS患者が出ても、2次感染者が出ないようにし、感染の連鎖を防ぐことが最優先事項です。

SARSウィルス外観SARSウィルスはコロナウィルスが変異したものとされています。

ウィルスの構造は単純なものであり、HIV(AIDSウィルス)やHBV(B型肝炎ウィルス)と比べて除去は簡単に出来ます。SARSウィルスはアルコール清拭だけでも一時的な除去ができます。一定時間の予防効果を狙う場合には、塩素系漂白剤により清拭することが必要です。

ただこのウィルスがやっかいな点は、HIVやHBVと比べて感染力が高いところです。またウィルスがヒトの体外で生存できる時間が比較的長いことも、やっかいな点です。重症化した患者の下痢中の糞便中には数日間、ウィルスが存在し続けていることが確認されています。トイレの便座などにはウィルスが付着している可能性もあります。不安な場所でのトイレを使用する時には、アルコールで清拭するのも一つの防衛策でしょう。

北京ダックSARSウィルスがどのように発生したのかについては、未だ分かっていません。インフルエンザウィルスのように、人獣の交互感染が現在のところ考えられています。劣悪な環境での食肉用の動物を人の住みかの近くで飼っていることで、人と獣との間をウィルスが行ったり来たりしているうちに、ウィルスが進化したと考えられています。

写真は北京ダックを膨らませている風景です。北京ダックはシンガポールでもよく食べられています。もちろん多くのものは器械で空気を送って膨らませていますが、中国の貧しい地域などにおいては、ヒトが口移しで膨らませているところもあるようです。このような行為もSARSウィルスが生まれたと考えられる原因の一つです。他にも牛、豚、鶏、猫など様々なウィルス進化経路が考えられています。

SARSウィルスをもとから根絶することは今のところ無理なようです。しかし今ではSARSウィルスをコントロールできる対応策が確立できています。一般家庭では手洗い・うがいを励行して下さい。小さなお子さんがいて、何でも口に持っていくような仕草がみられる時には、触りそうなものへの清拭を心がけて下さい。抗ウィルス薬やワクチンは現在開発の段階であり、現在安全性についてのテストがされています。市販までには数年がかかるものと思われます。

 

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写真は講習会で使用されたスライドを撮影したものです。
それにしても、ダックをあんな風に膨らませていたとは....カモを食べることがためらわれてしまいます。