SARSの原因と考えられているコロナウィルスは、簡単な手洗いやうがいによって予防できます。
コロナウィルスは体表面に付着した後、細胞の中にはいるまで数時間かかります。
このことは3-4時間毎に手洗いやうがいをすれば、予防が出来ることを意味します。
帰宅・帰社後に手洗い・うがいをするのはもちろんのこと、長引く外出であればどこか途中で手洗い・うがいをしてください。
コロナウィルスの莢膜(ウィルスの殻)は非常に脆弱なためアルコールや薬用石鹸にても効果があると考えられます。これらで手洗いを行えればほぼ問題はないと思われます。通常の石鹸は汚れを落とすもので、殺菌・殺ウィルス効果はありませんが、まったく手洗いをしないもしくは水のみの手洗いよりは効果があるでしょう。
ただしアルコール・薬用石鹸は多用すると皮膚の弱い方の場合、手が荒れることがあります。
また薬用石鹸は通常の石鹸と併用すると効果がありません。
薬品名 | 使用目的 | 注意事項 |
エタノール(消毒用アルコール) |
手指の消毒:76.9-81.4% | アルコールアレルギー 遮光・密栓・火気厳禁 |
クレゾール石鹸 Cresol |
手指の消毒 家具の消毒 |
アレルギー 遮光 |
グルコン酸クロルヘキシジン |
手指の消毒:0.1-0.5% 含嗽(うがい):0.1-0.5% |
アレルギー うがい薬の濃度は欧米・シンガポールでは0.1-0.2%です。日本では0.001%程度です。 |
塩化ベンザルコニウム benzalkonium chloride |
手指の消毒:0.05-0.1% |
アレルギー |
塩化ベンゼトニウム benzethonium chloride |
手指の消毒:0.05-0.1% |
アレルギー 遮光 石鹸で効果減弱 |
ポピドンヨード povidone iodine |
手指の消毒: 含嗽(うがい) |
ヨード過敏症・甲状腺機能異常のかたは使用禁止 アレルギー 妊娠中の方の長期に渡る使用は控えてください。 石鹸で効果減弱 着色しやすい |
うがい薬についてもいろいろな薬がでています。何を使ってもらってもよいでしょう。以下代表的なものを挙げると、
薬品名 | 使用目的 | 注意事項 |
グルコン酸クロルヘキシジン |
手指の消毒:0.1-0.5% 含嗽(うがい):0.1-0.5% |
アレルギー うがい薬の濃度は欧米・シンガポールでは0.1-0.2%です。日本では0.001%程度です。 |
ポピドンヨード povidone iodine |
手指の消毒: 含嗽(うがい) |
ヨード過敏症・甲状腺機能異常のかたは使用禁止 アレルギー 妊娠中の方の長期に渡る使用は控えてください。 石鹸で効果減弱 着色しやすい |
ウィルスは間接的な接触によっても移ることがあります。
ウィルスは発病者の体液中に存在します。咳やくしゃみなどの飛沫がついた手でドアノブやエレベータのボタンなどを触ることがあるでしょう。第三者がそれに気づかず同じものを触り、その触った手で自分の口元や鼻を触ると感染が成立することがあります。
アルコール清拭でもこのウィルスの駆除は可能と思われますが、アルコールはすぐ揮発するため長時間の効果は得られません。長時間の効果および確実な殺菌・殺ウィルスには塩素系薬液が有効です。
塩素系薬液(次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ソーダ)はすべての細菌・真菌(カビ)・芽胞・ウィルスに有効です。しかしすべてに有効ということは人体にも少なからずの影響を及ぼします。希釈したものを用いる場合でも手袋の使用をお薦めします。また塩素が揮発しますので、換気にもご注意下さい。政府の発表では50-100倍希釈のものが薦められています。希釈した薬液で清拭した後、水を固く絞った布巾で上拭きをしてください。
塩素系薬液は漬けおき消毒も可能です。子供が口にするかもしれないプラスチックのおもちゃなどは、この方法で消毒が可能です。(ただし金属ものはさび、人形などは溶けます)
また排泄物中にもウィルスが存在することもあります。もし発病者がトイレを使っていた場合、便座やドアノブに触っている可能性もあります。
発病者が触るおそれのあるものについては清拭の必要があるでしょう。手を洗った後は紙タオルや温風ファンを用いて完全に手を乾かしましょう。こちらのトイレはドアノブが濡れていることがよくあります。心配であればドアノブや便座をアルコールの含まれているティッシュで清拭してください。共有のタオルをつかうのは控えましょう。
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歯科においてもインフェクションコントロール(感染対策・管理)は大変重要なものです。
歯科で使うすべての器具・器械・綿/ガーゼはオートクレーブにて滅菌されています。オートクレーブとは高圧高温蒸気中に一定時間器具等を置き、残存細菌をゼロにするものです。
例えば肝炎ウィルスはSARSウィルスとくらべると構造が頑丈で、アルコール清拭ぐらいでは退治できません。肝炎ウィルスなどの薬剤抵抗性の強いものなどにはグルタラールにて浸漬し、まず一次殺菌を行います。その後さらにオートクレーブにて滅菌します。他漬け置き出来ないものは、次亜塩素酸ナトリウム(塩素系漂白剤)を用いて清拭します。
院内感染や交互感染を引き起こすことのないよう、私たちは徹底した管理を行っています。今回紹介した薬剤も、実際に私たちの現場でよく使われているものです。ご参考になれば幸いです。