BULLDOZER SLEEPER (ブルドーザーのように眠る人)
−いびきと睡眠時無呼吸症候群について−
source: Tue. Oct 22, 2002 The Straits Times
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12 Nov '02 Update
21 Apr '04 Added Photo
記事抄訳
「私の妻と子供は私のいびきがとてもうるさいことに不平を訴えていました。隣の部屋にまで聞こえていたようです。いびきはまるでブルドーザーの様な音でした。私は妻と別々に寝るようになりました。2年ほど前から私は横になるたび、窒息しそうになっていました。」
一夜に幾度となく起きてしまうことを想像してください。
毎夜このような悲劇に多くの人が悩んでいます。数年間もよく眠れていない人もいます。いびきをかき続けている人が突然いびきをしなくなったかと思うと、息をしていないことがあります。これを睡眠時無呼吸症候群と言います。寝ている時に呼吸が何回も止まって目覚めるため、十分な休息の取れる睡眠が出来なくなる症状です。
このたびSGH (Singapore General Hospital) とNDC (National Dental Centre) は新しい手術法を開発しました。11人に施術したところ大変良好な結果を得、米国の学会および学術誌に発表しました。
従来法による外科処置では上あごと下あごをおよそ1cm前にのばすものでした。この方法は白人(Caucasian)では顔貌の変化は目立たないものの、アジア系人種では非常に顔貌が変わってしまうものでした。
新しく開発した方法は、まず上あごと下あごを1cm前にのばします。その後上下左右1本の歯(前から4番目の歯)を抜いて、延びた分を差し引くように前歯の部分のアゴを後にずらすものです。
手術を受けたMr Mohamed Huseinさんは以下のようにコメントをしています。
「以前は非常に疲れやすかった。朝起きた時には、一晩中眠れなかったような感じだった。午後になると昼寝の出来る場所を探したものだった。しかし今ではそんなに寝なくても疲れることはない。昼寝をしなくても済むようになった。」
でも彼は顔貌が変わるようであれば、手術は受けなかったという。
シンガポールでは人口の15%、主に男性がこの病気に悩んでいると言われている。多くの人は自分がこの病気であることに気づいていません。これは夜に目覚めることがないことに起因しています。しかしこの病気にかかっている人は、朝に疲れていたり不機嫌になっていたりすることがあるでしょう。
この病気がひどくなると、睡眠時の酸素摂取量が低くなるため、高血圧や心疾患・卒中・痴呆にさえなる危険性が高くなります。また他の人と比べて交通事故や作業事故が2〜3倍になるとさえ言われています。
解説
いびきは、喉の奥の方でなっています。空気の通り道である気道が細くなり、喉の奥の部分が震えるために聞こえる音です。
鼻と口、食道(図中d)と気道(図中e)は、通常食べ物と空気が一緒にならないように分かれるようになっています。分別のポイントとしては、口蓋垂(図中a:
のどびこ、のどちん)、舌根(図中b: 舌の付け根)、喉頭蓋(図中c: 食道と気道を分けるフタ)があります。この部分が絶妙に動くことにより、気管内に食べ物が入らないようになっています。
しかしながら齢を重ねてくると、筋肉が弱くはりがなくなってしまうため、仰向けになると気道をふさぐように図中のa〜cが垂れ下がってしまいます。そのため呼吸をするたびに垂れ下がったフタが震えて音が出てしまいます。
加齢以外にも肥満により脂肪が沈着してくると気道が狭くなるためいびきが出やすくなります。アゴが小さい方や引っ込んでいる方、扁桃腺が腫れている方や鼻づまりのある方も気道が狭くなっているため、いびきが出やすい様です。
いびきはわずかながらにも気道に隙間があるため呼吸が出来ますが、時には気道が完全にふさがれて呼吸が出来なくなることがあります。これを睡眠時無呼吸症候群と呼びます。いびきをかく方の1〜2割があてはまるとされています。呼吸が止まるのは10〜20秒の間であるため、窒息して死亡することはありません。ただ頻繁にこのような無呼吸の状態が起こると上に書かれたような症状や合併症が出てくることがあります。
抜本的な治療法としては今回新聞で紹介された手術もあるでしょう。今回紹介された手術方法は気道を広げるため、上あごと下あごを前の方に出すというものであり、顔貌の印象を変えないように、上下左右歯を一本ずつ抜いてそのスペースに前歯の部分のアゴだけ後にもどすというものでした。
しかしながらいびきで手術までするか、と思われる方もいるでしょう。家庭内で出来る対処方法としては、横臥姿勢で寝る(横向きに寝る)というのが、最も手早い方法です。これは上に挙げたフタの部分が気道を塞ぐ様に垂れ下がるのを防ぐことを目的としています。
いびきはアゴの小さな方や引っ込んでいる方にも起こりやすいと上に書きました。右のようなマウスピースを作って、下あごを前の方にずらすようにして眠る治療方法などもあります。マウスピースによって外科的処置をすることなく気道の確保が出来るようにする治療方法もあります。
いびきの治療には、まずかかりつけ医師、もしくは専門医の診断が必要です。場合によっては手術やマウスピースなど、歯科医と連携しながら治療を進めることもあります。
今回はすごく長い文章になってしまいました。いびきのお話だけに眠くなってしまいそうですね。
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