痛い口内炎
Today, July 5, 2005, p36
Update: July 12. 2005
【抄訳】口内炎は様々な方法で治すことが出来ます。
始めは小水疱から始まり、潰瘍となります。潰瘍となった時点で、痛みを伴い始めます。
アユルベーダ(Ayurveda)
アユルベーダによれば、口内炎の原因は動物タンパク質の過剰摂取や高アルカリ性の飲み物によるとされています。また消化器官の不調も原因とされています。
口内炎には3種類あるとされています。
刺すような鋭い痛みを伴うvata。
赤い潰瘍を伴い、焼けるような痛みがあるpitta。
鈍いいたみや痒みを示すkaptha。
お口の中をきれいに保つことで、口内炎の症状は緩和するでしょう。含嗽剤や局所塗布をすることで痛みを取り除き、治癒を早めることも出来ます。Vata型の潰瘍は鎮痛作用を持つハーブを混ぜたものでうがいをすることにより治すことが出来ます。Pitta型の潰瘍は、冷やす効果と治癒を促す効果を持つハーブを使います。Kapha型の潰瘍は、鼻の薬効があるハーブを推奨します。
蜂蜜、ギー(Indian clarified butter)と牛乳を混ぜたものをうがい薬として使うと、灼熱感を素早く和らげ、潰瘍を治すことが出来ます。
Triphalaの抽出物とレーズン、ターメリック、蜂蜜を混ぜたものも速効効果があります。ゴマ油、ギー、砂糖、ミルク、蜂蜜を混ぜたものも、痛みを取り除き、潰瘍を治します。
アロマテラピー(Aromatherapy)
エッセンシャルオイルのいくつかは口内炎を治し、お口や歯ぐきの健康を守ります。
ミルラ(Myrrh)は殺菌剤として、実際のアロマテラピーで使われています。最も簡単なミルラの使用方法は、綿棒に付けて塗ることです。
もしミルラの臭いが好きでなければ、代替オイルとしてティートリー(Tea tree)があります。ティートリーを2滴タンブラー一杯のお湯に入れて混ぜて、洗口剤として使います。
現代製剤(Modern medicine)
多くの口内炎はアフタ潰瘍です。口の中に出来た痛みの強い白色もしくは黄色の病変でその周りが赤く腫れているものです。
口内炎の正確な病理はまだ分かっていません。分かっているのは免疫状態が低下している時に起こると言うことです。
口内炎はストレス、食物アレルギー、ビタミンB12 欠乏などの栄養欠乏によっても引き起こされます。脱水症状によっても起こります。女性の場合には、生理周期によるホルモンの変化も関係します。
一般的に治療は薬剤の局所塗布をすることで、不快感をなくし粘膜表皮細胞の治癒を補助します。
お口の中の清潔状態を保つことによって、口内炎は予防することが出来ます。辛いものやスパイシーなものを避けることによって、口内炎の痛みは和らぎます。
【解説】シンガポールは多民族国家であるがゆえ、それぞれの民族の文化に根付いた民間療法が存在します。漢方治療は日本の医療でも取り入れられていて、なじみ深いものになっています。アユルベーダやアロマテラピーもそれぞれ伝統的なものです。
アユルベーダは3つの要素のバランス(Vata、Pitta、Kapha)をいかに個人個人に適したものにするか、というものです。バランスが崩れた場合には、体調や心の不良を引き起こすとされています。この3つの要素は5大元素(空気・風(霊)・火・水・土の5元説のこと)から成り立っていると考えられています。3つの要素のバランスが崩れた場合には、このバランスをいかに平衡に保つようにするかが考えられます。また5大元素の内足りないものがある場合には、その元素を多く含むものを採るように指示がされます。
アロマテラピーは植物から生成された有効成分を患部に塗ったり、吸い込んだりすることによって、効果を得るものです。精油は皮膚にしみ込みやすくなっているので、有効成分が直接患部に届いたり、芳香(揮発)成分が直接鼻粘膜や気道・肺に入り粘膜吸収が出来るようになったりしています。芳香成分は、また精神的なリフレッシュを促します。
ひるがえって現在の薬剤は、科学的根拠に基づき作られ、動物実験・臨床実験を通して、薬剤が承認されます。承認後の薬剤が販売された後、副作用などの報告は随時集められています。もし万が一重大な副作用がでた場合には、その薬剤は回収されます。古典的医療は様々な試行錯誤を繰り返して、治療法が確立されています。反対に現代製薬は様々な科学的検証を加えてから、経験的知識を集めるようにしています。
今回取り上げられた口内炎は、目に見えることの出来る潰瘍です。潰瘍は表皮が破れることにより、中の弱い組織が露出し、さらにそこに炎症が起こっているものです。何かが触ると、強い痛みを生じます。
現代製薬、アユルベーダ、アロマテラピーすべてが口内炎に対し、清潔に保ち、炎症を抑えるものや殺菌効果のあるものを使用することを薦めています。アロマテラピーで挙げられたミルラは抗炎症作用と消毒作用が強いことで知られています。ただしこれはとても高価な製油です。もう一つ挙げられたティートリーは消毒作用が知られています。オーストラリアではよく用いられていて、ティートリー入りの歯磨き粉(右写真)なども市販されています。
漢方治療、アユルベーダ、アロマテラピーは、そのどれもが長い歴史を持ち十分な経験則に従っています。さらに現代では、それらの科学的根拠についても検討が加えられてきています。どの治療法をとっても、体のバランスを取りながら、本来の生体のあるべき姿に戻そうとするものです。
体質にあった治療はもちろん現代医療でも目指すものになっています。近い将来、遺伝子解析などにより、副作用の少ない薬を選ぶことが出来る日も来るでしょう。ただ残念ながら、今は様々な制限があり、最大公約数的な薬が使われることが多いのは否めません。もし体質に合わない薬などがあるようでしたら、その旨を担当医に伝えるなどして、いろいろな面からアプローチを試みるべきでしょう。
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