矯正治療を受けたリス
Reference: article
from Brookfield Zoo
Update: 23 Oct 2005
【要約】Brookfield 動物園のウッドチャック(リス科の動物)のStormy君は世界で初めて(?)矯正治療を受けた齧歯類となった。
2週間に一度Stormy君は動物病院に通っている。まず始めに反って曲がった切歯を削り、矯正のワイヤーを接着した。おかげで歯もまっすぐに並び、リテイナーも必要ないようだ。
Stormy君はなぜ歯の矯正が必要だったのだろうか?
齧歯類には生涯伸び続ける前歯があります。通常歯が伸びても、樹などをかじり続けることによって、自然と歯はすり減ってきます。しかしながら彼の歯はおよそ45度に曲がって生え始めたのです。歯がうまく噛めないことによって、歯をすり減らすことも出来なくなったのです。
上の問題を解決するために、治療方法は2種類であった。一つは歯を抜いてしまうこと。しかし齧歯類の切歯は顎の全体に渡っていて耳の辺りにまで半円状に横たわっています。(歯全体の10%程が見えているに過ぎません。)この大きな歯を抜くのは大変なことです。もう一つの選択肢は矯正のワイヤーを付けることでした。そしてこれが功を奏したのです。
【解説】このごろは矯正治療も一般的になり、多くの子供たちが矯正を受けるようになっています。普通の動物は矯正治療を受けるなんて事はまずありませんが、今回Stormy君は幸運にも矯正治療を受けることが出来ました。通常動物たちにとって、歯ならびがゆがみ、歯が機能しなくなると、自然界では生き残ることは出来ません。
齧歯類にとって前歯は生きるための最重要箇所ですので、これを取ることはできません。仮に歯を抜いた場合、顎の骨の厚み半分に相当する部分を取ることは、大変な手術になります。そこで今回は選択肢として矯正治療が採られたことになります。
写真を見る限り、ヒトの歯の矯正治療というより、巻爪の矯正治療のようです。どちらも原理的には同じで、理想的な形にワイヤーを曲げておいて、並べるべき位置にワイヤーをくっつけます。そしてそのワイヤーが元(理想的な形)に戻る力を利用して、対象物を動かすものです。
ヒトの歯の矯正の場合、歯が動いた後の歯を支える骨がすっかりと落ち着くまでリテーナーという装置を着ける必要があります。しかしながら、今回の齧歯類の歯の矯正は、反りを治すだけですので、リテーナーは必要ありません。さらに歯は顎の骨全体で支えられているので、歯の大元の位置は変わっているわけではないのです。もちろん小動物がリテーナーという装置を好んで着けてくれるはずもありません。
歯は摂食に必要不可欠な器官です。歯がダメになると、自然界では死に直面することになります。人間界では様々な知恵によって、ダメになった歯を補う方法があります。しかしながら、自分の歯が一番いいことは誰もが知っています。
歯をしっかりと機能させるためには、やはり理想的な位置に歯が並んでいる必要があります。歯ならびをよくすることは見栄えがするだけではなく、よく噛めるようになり、歯のお手入れもずっと楽になります。歯ならびが悪くて、虫歯ができやすい方や歯垢・歯石などのつきやすい方は、担当の歯科医に御相談下さい。