煙草
18 Jan 2004 update
シンガポールで信号待ちをしていると、道路に右のような警告が書いてあるのが目に入ります。
煙草の害についてはいろいろ言われているので、今さらと思いの方もいるでしょう。煙草による弊害は、肺ガンや心筋梗塞・脳梗塞の発症率を引き上げるだけでなく、お口の中にも影響します。
お口の中の影響として真っ先に思い浮かぶのは、ヤニの沈着でしょう。ヤニとは上に挙げた写真のタールのことです。タールと言われれば、ベトベトした液体だと分かるでしょう。
歯のお掃除がしづらいところにヤニ(タール)が付くと、食べ物の残りカス(食物残渣)がくっつきやすくなります。細菌にとっては好都合の環境が維持されやすいため、非喫煙者と比べて、喫煙者のむしばや歯周病の発生率は高くなってしまいます。
我々の体内には細菌に対する防御機構が備わっています。唾液もその内の一つで、洗浄効果(自浄作用)やpHの緩衝能、初期脱灰歯質の再石灰化作用などがあります。しかしながら煙草を吸うと唾液の分泌量が少なくなるため、唾液による様々な効果が得られにくくなります。
さらに煙草に含まれるニコチンには血管を収縮させる働きがあります。血管が細くなると、血液の循環量が減少します。血液は栄養物や酸素を運んでいるのはもちろん、血液の中には白血球や血小板もあり、体内の免疫防衛応答や組織修復の役目を果たしています。煙草の煙は歯ぐきの血管にも影響を及ぼします。歯ぐきの細菌に対する抵抗力や組織の回復力が下がると、慢性的な歯周病が進行しやすくなってしまいます。
歯周病の注釈
慢性的な歯周病において歯石・歯垢が付いているところ(細菌がいるところ)に接する歯ぐきでは、慢性的な炎症が続いています。慢性的な炎症とは、細菌などが私たちの組織を壊し続けようとしている一方で、私たちの体内では細菌の進行を何とか抑えようとしたり、壊された組織を治そうとしたりすることが果てることなく続いている状態です。細菌と私たちの体とがせめぎ合っているのですが、原因となるものが存在し続ける限り、こぜりあいが解決することはありません。その中で細菌が増殖したり、自分の体の調子を崩したりすると、均衡状態が解けて症状が進行することになります。喫煙も自己の防御機構をおとしめるため、歯周病が進行しやすくなります。
煙草は歯周病進行に関わる重大なリスクファクターの内の一つになります。
それでも、このことに自覚する人はほとんどいません。
その理由として、喫煙者の歯ぐきは黒ずみ、ニコチンや一酸化炭素による血流障害で硬くごつごつした状態になるため、歯周病の外見的特徴ある赤く腫れた歯ぐきには見えないことがあります。もちろん、歯周病自体もともと気づきにくい病気であることも挙げられます。
煙草を吸うことによって、気づかない内に様々な弊害を引き起こしています。
この新年の機会に、禁煙を誓ってみては如何でしょうか?
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