こめかみ
18 Nov '03 Update
耳の上あたりの側頭部のことを「こめかみ」といいますね。
こめかみは漢字変換すると、「米噛み」となるように、ものを噛(か)むときに動く場所となっていることから、この名前が付けられています。
お口を開閉させながら、耳の上前方を触ってみると、ぴくぴく動いているところがあります。その動いている箇所(筋肉)は側頭部全体に広がっています。
右図の赤い部分がその筋肉(側頭筋)であり、かみ合わせに関わる筋肉の内の一つです。かみ合わせの筋肉には、頬骨から下顎骨下部にかけてある筋肉(咬筋;通称頬肉)なども含まれます。
肩こりや腰痛が慢性の筋肉痛からなるように、側頭筋も重い痛みを生じることがあります。筋肉の痛みとして理解されていない場合、偏頭痛として扱われることもあります。
もちろん偏頭痛のすべてが筋肉痛ではありません。“額に青筋を立てて”の様な下りにもあるように、こめかみには太い血管も出ています。偏頭痛は側頭筋上部から出てくる血管の痛みのこともあります。また頭蓋骨内部の脳神経系の痛み・脳圧の変化による痛みの場合もあります。
ちなみにかき氷を食べて、こめかみが痛くなるのは、脳神経系の情報錯誤による関連痛です。
我々が「顎関節症」と位置づける症例の中には、側頭筋の慢性炎症による痛みも含まれています。我々は顎関節周囲やお口の中を診て、何が原因で、どこにどういった症状が出ているかを判断します。多くの場合、顎関節症はお薬やかみ合わせの負担を少なくするマウスピースなどによって、症状は軽快します。
ただ顎関節周囲の骨や関節円板自体が変形・変位している場合には、注意が必要になります。スポーツ選手が肩や肘・膝を痛めるとなかなか復帰が難しいように、骨や関節自体を痛めるとすぐには治癒しません。リハビリや基礎トレーニングに似たものが必要になってきます。場合によっては手術も必要になります。
こめかみの痛みは、様々な要因で発生します。もし慢性的な痛みをお持ちの場合には専門家による診断を仰いでください。その中で顎関節症が疑われる場合には、歯科的見地からアプローチすることもあるでしょう。
現代の軟食化する食生活では、「こめかみ」の意味するところを忘れがちになってきています。筋肉をあまり使うことがなくなった現代の食事では、意外なことが原因で、この「こめかみ」の存在に気づくことがもしかするとあるかもしれません。
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