要旨

 顎関節症(がくかんせつしょう)は、様々な素因から発生し、症状も様々です。病名は一つでくくられていますが、原因とそれに対する治療方法は一つではありません。まずは顎がどのように不都合になっているかを正しく知ることが必要です



少し前タレントである歌手が顎関節症(がくかんせつしょう)と診断されお仕事を休んだことがありました。その頃からでしょうか、顎関節症という病名は以前よりも一般的になりました。顎関節症とは顎(あご)の関節や筋肉の痛み、顎が鳴る、口が開けづらいなどを症状とする病気の総称です。様々な原因から成るいろいろな症状をひとくくりにしているため、混同しやすい状態になっています。


顎関節は動くことのない上顎(うわあご)と大きく動く下顎(したあご)、骨がこすれないようにする関節円板、および靱帯から出来ています。顎の関節は他の関節と違い、関節を少しはずすことによって、大きく動かすことが出来ます。例えるならば指とか背骨の関節をバキバキ鳴らした後、それらの関節がさらに動くような仕組みです。通常の状態では顎は滑らかに動くため、大きく口を開けても関節が鳴ったりすることはありません。ヘビなどのは虫類では自分の頭より大きな小動物を食べることが出来ることで知られています。ヘビと人とでは骨格は違いますが、元来顎は広く動くように出来ていて、関節の枠の中だけで動きがとどまるものではないのです。

 

顎の動きを見てみる

 


顎関節症の原因として考えられるものに、かみ合わせの筋肉のこわばりや靱帯の損傷、関節周囲組織の炎症、関節円板の異常などがあげられます。先ほどの指や背骨の関節を例にとって考えますと、現れる症状は背筋痛や腰痛で知られるような筋肉からの痛みであったり、突き指のように靱帯を痛めて動きが制限されたものであったりします。腱鞘炎の様に、酷使されたことで周囲組織に炎症が起こることもあります。また顎の関節円板の形がいびつになったり、滑らかに動かなくなったり、円板の位置がずれたりすると、顎の動きに制限がかかることや、円板と骨とがこすれて音が鳴ることもあります。指とか背骨の関節が音を鳴らした後、それ以上動かないのと同じような状況です。


顎関節症の治療は原因となっているものを確かめた上で、治療を行っていく必要があります。筋肉がこわばっていたり、靱帯が痛んでいたり、炎症が起きていたりする場合にはお薬を飲むことで治ることもあります。関節円板が滑らかに動かなくなっていたり、本来の位置からずれたりする傾向がある場合には、運動療法(リハビリ)で対処できることもあります。顎の関節がリラックスできる位置が分かりづらくなっている場合はマウスピースのようなものを作成することもあります。マウスピースはリラックスできる位置を体に覚えてもらうことを意図したり、夜お休みしている時の歯ぎしりや噛(か)み締めなどによる不必要な緊張を和らげることを目的としたりしています。


顎の関節の異常は、他にも骨の形態以上が原因となっていたり、関節の中の空洞の繊維化が原因であったりもします。また脱臼や腫瘍、関節リウマチなどによっても起こることもあります。詳細については歯科医にご相談下さい。

 

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