UCLA Implant Master Course 1 Year Program を終えて
2005年12月より2006年12月にかけて、UCLA (California, USA) の Dr Sascha A Jovanovic の下で、 インプラントの研修を積んできました。
右の写真はUCLA構内のRoyce Hall 周囲の風景です。抜けるような青空の下では、広いキャンパスのあちこちで読書をしたり、談笑したり、お昼寝をしたりする学生の姿が見えました。
学生には学生の時間があり、私たちには私たちの時間があります。のんびりと時間を過ごしたいところですが、講義・ディスカッション・実習・手術供覧・症例検討・試験など朝から晩まで中身の充実した内容でした。
インプラントマスターの1年間コースといっても、1年間クリニックを空けていたわけではありません。コースの大部分は、Dr Sascha をシンガポールに招いて行うものでした。シンガポールにいながらにして、コースの履修ができたので、クリニックを休む日数を最小限に抑えることができました。インプラント界における世界のトップクラスに位置する先生の下で、実習訓練を行い、自分が今までに行ってきたインプラントの症例について、先生と受講生との間でケースプレゼンテーションを行ってきました。もちろん講義もあり、それぞれのステップごとに試験もあって、久しぶりに夜遅くまで試験勉強などもしました。
インプラントマスターコースの最終仕上げは、UCLAで行われました。
UCLAの広大なキャンパスは私の出身大学の東京医科歯科大学とは比較にならないほどですが、歯学部・歯学部付属病院はどことなく医科歯科大学と似ていました。写真では手前のビルが付属病院、奥に見えるビルが大学歯学部になっています。
Dr Sasha (写真中央)は UCLA の所属になっていますので、そこで彼は担当医師としていろいろな症例ごとに手術の供覧をしてくれました。彼はコースのシンガポールでの開催に当たって、シンガポールの暫定的な歯科医師免許を取得し、シンガポールでも手術の供覧をしていましたが、やはり地元での手術はさらに素晴らしい物でした。
UCLAでは、他にも世界のトップクラスに位置する各界の先生にもお世話になりました。Dr Henry Takei (Periodontist, 歯周病学教室)、Dr Kan (Implant and Prostho, インプラントおよび補綴)、Dr Buchanan (Endodontist, 歯内治療学)を始め、様々な先生のお話を聞け、非常に有意義なものとなりました。
その中でもDr Buchanan(写真中央)は私と同じく歯内治療の専門分野だったので、彼が考えるインプラント治療の話は大変共感を得ました。私は保存学出身ですので、歯を何とか残すことについての教育や経験は一般の歯科医に比べると多い物と思っています。そういった私の考えからすると、インプラントの講義の中で披露される症例の中には、「どうして抜歯したの?」といった物が多く見受けられます。このあたりは外科専攻の先生と保存科専攻の先生との違いでしょう。歯はもちろんなるべく残しておいて方がいいに決まっています。この点についても、彼と私との間で話をしました。
しかしそれでもどうしても残すことができない歯ももちろんあります。
この場合、歯の喪失を最小限に抑えることのできる治療は、現在ではインプラント以外にはありません。
どうしても歯を残すことができない場合、次の最善の手がインプラントなのです。Dr Buchananもこのことに気づいていて、Endodontistでありながら、インプラント治療も始めたということでした。私もほぼ同時期に気づいて、インプラントを学び、臨床に取り入れたということで、彼との共感を得ました。
インプラント治療は今めざましい勢いで進化しています。生化学や細胞化学の進歩が臨床に応用されるようになって、あごの骨の量や歯茎の形までもコントロールできる時代になってきました。一昔は無くなった歯が単に補えればそれでよかったものが、今はちゃんと機能して、美しく見えるようにすることまでが可能になってきました。
歯科医は患者様の要求に対して、応えていく義務があります。昔は不可能だった物が、現在では可能になった物がいくつもあります。将来はもっと違った形で新しい物ができたり、簡単な方法が開発されたりするでしょう。私たちはたえず知識や技術を研鑽して、今手に入れられるベストが患者様に提供できるようにしていきたいと思います。
写真は「インプラントマスター」の認定証をいただいたときの様子です。1年間のプログラムを修了して、様々な知識・体験を得られました。またその中で講師や受講生の先生たちとディスカッションを通して得られた親交は大変かけがえのないものとなりました。
文 桜井 和郎