はじめに/必要性/検診前準備

はじめに

歯医者で聞く子供の叫び声、鳴き声は他の子供にも大人にも不安にさせるものがあります。もちろん子供の泣き声は恐怖感から来るものであり、ちょっとした刺激に過大に反応してしまうことがほとんどです。

これはお化け屋敷などに入って、おどおどして身が縮こまっているところに、ささいな刺激(風を掛けられる、予期せぬ所から人(おばけ)が出て来る)があると、悲鳴を上げてしまうことと、似ています。

現在の歯科医療は、歯科検診がお子さんにとっていい経験ができるような配慮をしています。お子さんに分かるような簡単な言葉を使ったり、実際に見せたりすることで、歯科医が何をしようとしているかを教えています。つまり、これからすることに対しての事前知識を与えてあげているのです。お化け屋敷なども事前に何が起こるかが分かっていると、怖くなくなってしまうことと同じ事ですね。


歯科治療に対する恐怖心は本能的なものでは決してありません。子供が実際にひどい体験を受けたことがない限り、または他の人からそのような体験を聞いたことがない限り、子供が歯科治療を怖がることはありません。子供が初めて歯科医を訪れる際に、保護者が子供へかける言葉や行動によって、子供が非常にいい体験をえることもできるのです。


ここでは、どのようにしたら子供が心地よく歯科医療を受けられるかについて、お話を進めていきます。

幼児歯科検診の必要性


早くから歯科に通うだけの理由がいくつかあります。


1. 保護者がお口の中の問題に気づかない場合があること。


2. 早期のチェックによって、すばやく問題を解決できること。


3. 歯の生え方や噛む位置が良くない場合、指やくちびるを噛む癖がある場合には、歯並びが悪くなる可能性があります。早期に発見することにより、悪い方向に向かうことを防ぐことが出来ます。またお口の中の清掃状態により、将来予想などもできます。

以上が主な理由です。


特に症状がないのに歯科医院に訪れることは、歯科医院という特殊な雰囲気になれるという意味でもメリットがあります。最初の歯科医院の体験が心地よいものであることは大変重要です。歯が悪くなってから歯科医院に行った場合、歯の痛さやこれから起こることに対しての恐怖感から、心地よい体験が得られない可能性があります。一度恐怖感を覚えた子供に対して、この恐怖心をぬぐい去るのは簡単なことではありません。

歯科医院に連れて行く際に心がけることは?


お子さんを歯科医院に連れてくる時、または歯科医院の話をする時には、ごく普通に気軽にお話をしておいて下さい。息子さん、もしくはお嬢さんに会いたがっている人がいるから紹介したいこと。その人はあなたに興味を持っていること、あなたのお口の中をピカピカに綺麗にしてあげたいこと、そのような意図を伝えておいていただけるだけで、お子さんの姿勢はずいぶん違ってくるはずです。


Do's (初めての診療でしておいていただきたいこと)


1. 家族の誰かが歯科医院に行く際に子供を連れて行き、歯科医院の雰囲気に慣れさせること。歯科医院の雰囲気には独特なものがあり、少なからず緊張感が生まれてしまいます。家族や知り合いの方がしているのを見ることで、ある程度の疑似体験をしておくと、子供も受け入れやすくなります。子供は初めて見るものに少なからず興味を覚えて質問をしてくるでしょう。子供が同席していれば、歯科医側もわかりやすく説明します。


2.「歯医者さんごっこ」:照明を当てて、子供の歯を声に出して数えてみましょう。その後、親と子供の役割を交代させてみましょう。


3. 予約は子供が疲れていない日や時間帯を選んでください。


4. 歯科受診は何も特別なことではなく、みんながしていることを伝えてください。特に言い聞かせる必要はありません。普通にお話をしてください。子供の質問には正直に答えてあげてください。


5. お約束の日には子供の準備が出来るまで十分な時間を取ってあげてください。せかせる必要は全くありません。


6. 診療室に保護者の方が同席するかどうかについては歯科医とご相談下さい。自立度や依存度により異なります。


Don'ts (初めての診療で控えておいていただきたいこと)


1. 歯科医院訪問をその日の一大事項とはしないで下さい。子供がその日には何かが起こると身構えてしまうおそれがあります。


2. しつけの際の言葉に歯科治療を引き合いに出すのはおやめ下さい。


3. 歯科医院訪問に対して不安にさせないようにしてください。自分自身のイヤな思い出などを子供に話さないでください。


4. ネガティブな言葉、痛い・刺す・抜く・削るなどは使わないでください。「~しないと、~することになるよ」という言い回しも避けるようにしてください。「ピカピカになって、もっと可愛い笑顔を作ろう」「おいしいものがいっぱい食べられるようにしよう」などのポジティブな結果が得られる表現を使ってください。


5. 何が起こるかについて無理にお話しする必要はありません。保護者の方が分かる範囲のことを優しく言っていただけるだけで結構です。歯科医は言葉を置き換えながら、治療内容についてお話を進めるようにしています。


6. 非常にいい子であることを期待することはありません。お子さんは恥ずかしがっていたり、怖がっていたり、やんちゃであったりするものです。子供がかんしゃくを起こしても、きっぱりとした態度を取ってください。3歳を過ぎれば、ほとんどのお子さんが一人でうまくできるようになります。