イルカの歯科治療
source: Today p.8, 25 Apr 2003
25 Apr '03 Update
【記事抄訳】
セントーサ ドルフィン ラグーンのピンク ドルフィン(30歳代 210Kg オス)が水曜日の朝11本の歯を抜きました。
アンダー ウオーター ワールドの館長によると、ジャンボの歯は摩耗したり割れたりしてひどい状態だったという。獣医によると他のオスのイルカと仕切をこえて争っていて、多くの歯が割れたとのことだ。
水曜日、アメリカからの海洋哺乳類専門家医のTed Hammond氏や2人の歯科医師および麻酔医らがジャンボの痛みを和らげるためにとり組んだ。
最初の抜歯は出血することなどがあったが、ボーンワックスを用いて出血は止めることが出来た。施術から15分後ジャンボはぐるぐると動き始めた。
「ジャンボはすごい勢いでグルグルと水槽内を泳いでいた。どうしてあんな風に泳いでいるのかトレーナーに尋ねたら、トレーナーは怒っているからだよと答えたよ」と担当医師は言っていた。
木曜日、ジャンボはいつものように戻り、気持ちよさそうに食べていた。「スタッフに不快感も示さなくなった」とトレーナーは言っている。
【解説】
先日は子供の歯が14本抜かれた記事でしたが、今回はイルカの歯を11本抜いた記事です。
イルカの歯が何本あるのか詳しいことは知りません。一般に哺乳類は歯の形や数が決まっているのですが、海洋哺乳類は歯の数が一定していないことが多々あります。例えば歯クジラのように小さな歯が顎骨に幾つも生えていることがあります。このイルカもそれに類するものと思われ、写真を見た限りたくさんの同じような形の歯がならんでいます。その中で黒ずんだ歯がいくつか見えるという状態でした。
動物の施術は人間で使うような局所麻酔ではなくガス吸入による麻酔です。人間に使う麻酔薬の中には、麻酔の効果を高めるため血管を収縮させる薬が入っています。そのため抜歯時や手術時に出血がひどくなることはありません。
今回のケースの麻酔には血管収縮薬が入っていないので、ちょっとした出血があったのでしょうね。ここで使われたボーンワックスとは骨中に埋め込むことが出来る止血剤のことです。骨は全部が硬いわけではなく、中はたくさんの穴があいています。その骨の空洞には血管や神経が走っています。ボーンワックスとはその穴の中に塗り込むことが出来る止血剤で、人間の治療時にも使われているものです。
術後イルカが走り回ったとのことですが、傷口に海水(塩水)が入れば、それはもう痛いでしょうね。でも他のイルカとなわばり争いするぐらい、気丈なイルカですから、怪我にも慣れているのでしょう。翌日には元気になったそうです。よかったね。
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