ラバーダム防湿
20 Jan 2003 Update
口の中は唾液で湿った状態にあります。
歯科では様々な薬品を使います。薬品をつける前に歯が唾液(または血液・組織液)で濡れてしまうと、正しい効果が得られないことがあります。また唾液に触れることで、何らかの汚染物が付着することがあります。
とくに歯の中(いわゆる歯の神経の部分)を治療する際には、感染対策が大変重要なキーワードになります。いわゆる歯の神経の部分は、根の先から骨の中へとつながっています。感染対策に気を遣わないと、残留した細菌もしくは新たに侵入した細菌が骨の中へと侵入・増殖する結果となることがあります。
私たち歯科医師は、唾液で濡れた状態を回避するため、また新たな細菌感染を惹き起こさせない手段として、ラバーダム防湿法を使うことがあります。ラバーダム防湿法とはゴム(ラテックス)のシートを使い、治療する歯のみを隔離する(露出させる)方法です。治療する以外の歯や歯ぐき、舌、頬はシートにより隔てられています。
ラバーダム防湿法を行う利点として、以下のことがあります。
○ 器具や削片、薬品、洗浄液などの吸引・誤嚥を回避。
歯科では歯を削ったり、薬品を使ったりします。この際に生じる微量の粉塵や揮発成分を吸い込んだり、飲み込んだりするのを防いでくれます。
○唾液、血液、組織液からの隔離。それによる相互汚染の回避。
通常の治療では風をかけて唾液等を吹き飛ばしたり、吸引器で乾燥したりして乾燥させます。ラバーダム防湿は特別な操作をすることもなく、持続的な隔離が出来ます。
○軟組織の圧排、防護
通常の治療では、吸引器や小さな鏡(デンタルミラー)などにより頬を引っ張たり、舌を抑えたりすることがあります。ラバーダム防湿はこういった器具を必要とせず持続的に分別することができます。つまり頬や舌に機械で触ることがないので、煩わしさや違和感が軽減されます。
○視野の向上。乾燥した環境。鏡の曇りを抑える
○効率の上昇。
患者・術者とも治療している歯のみに集中できるため、治療がスムースに進行できるようになります。
様々な利点が得られることがおわかりでしょうか?
一見しただけですと、お口の中がシートで覆われて息苦しくなるように感じられるかもしれません。しかしながら口角(くちびるの根元)にはすき間もありますし、鼻からも息が出来ます。
しっかりとした治療、とくに根の治療に置いては、予知性・予後を高めるために使われています。日本ではまだまだ広く使われていないようですが、欧米では以前から使われている方法です。ラバーダム防湿法は、簡単に出来、治療をより確実なものにする、大変いい方法です。
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