医神の娘

13 May 2003 Update


今回はギリシャ神話の続きです。


前回紹介したアスクレピオスはアポロンの息子です。


アポロンは詩歌、音楽、予言、弓術、医術を司り、オリンポス12神のうちの一人です。アポロンは時代を経ると太陽神と崇められたり、ローマ神話ではアポロと呼ばれたりするようになっています。


そのアポロンの父は有名なゼウスです。


アスクレピオスは由緒正しき家系の医神と言えますが、実は神であるアポロンと人間との娘との間に出来た子です。純血な神の子ではないため天界に住むことは出来ず、ケンタウロス族(半人半馬)の賢者の元で育てられます。ここで医術を学んだとされています。アスクレピオスの医術は人間界で最高のものとなりました。しかしながら死者までも蘇生できるようになると、人間と神との違いがなくなることをおそれた神々は彼の処罰を決議しました。アスクレピオスは祖父に当たるゼウスの雷に打たれ亡くなりました。


アスクレピオスの二人の息子は内科・外科の神となり、二人の娘は治癒・健康の女神となっています。


現代医療の礎とも言えるヒポクラテスは、有名な宣誓文「ヒポクラテスの誓い」の中で、アポロン、アスクレピオス、そして二人の娘女神の名前をまず挙げた後宣誓を行っています。ヒポクラテスは紀元前400〜300年頃の医者ですが、既にこの時代から医療者が肝にすべき規範や行動が示されています。実際に医療関係者を律する組織も作られていたようです。


さてここでアスクレピオスの娘である健康の女神の名前はヒュギエイア(Hygeia)と呼ばれています。ギリシア語の"Hygiene"は「健康(の技術)」という意味があります。英語では転じて「衛生」という意味になります。ちなみに歯科衛生士を英語では「dental hygienist」とよびます。


折しもシンガポールはSARS騒ぎで、手洗いやうがいなどの衛生教育が盛んになってきました。疫病の蔓延阻止にはやはり衛生的な生活が一番であることを、シンガポール政府はいち早く受け止め、衛生教育の啓蒙を各新聞上で毎日のように行っています。SARSの制圧宣言も間近になってきました。ただ制圧宣言後もシンガポールにも他国にも患者はいるわけで、もう衛生的にしなくてもいいというわけではありません。衛生的な環境こそが、いわゆる伝染病の伝播防止には一番であることは、今も昔も変わりません。

 

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