歯がため

9 Jan 2003 Update

あけまして、おめでとうございます。


シンガポールにいるといろいろな正月があるし、季節感はないしで、今ひとつ正月の感慨に乏しくなってきます。中国正月にもなると、干支の動物がでたり、何となく分かる正月の挨拶が四文字熟語ででたりなどで、ちょっとした正月気分が味わえます。


さて、皆様お正月といえば、何を連想しますか?
長寿を祝うと言うことで、お餅のお話にします。
お餅を食べる時、ながーく伸びることから長生きを印象づけます。
そして鏡餅も実は長生きを願っての儀式に用いるものでした。


歯は齢をも意味し、歯が丈夫なことは長寿・健康を意味していました。そこで延年長寿を願って、歯が丈夫になるための儀式がありました。この儀式のことを「歯がため」といいます。


歯がためは正月3が日の間、(または半年に一度で1月と6月にもすることがある)、鏡餅やイノシシ、鹿の干し肉などをたべる儀式です。使う食材は地方により様々ですが、固くて簡単には食べられないものがよく使われています。


歯の丈夫な人が、固いものをかじっているのを見て、それをまねしようとしたのが始まりだと考えられます。もちろん普通の人がそれらをかじれるはずもありません。儀式は形骸化していき、それらの固い食物をなめるとか口に少し触れるなどに変化します。固くなった鏡餅は、おいそれと簡単にかじることなど出来ません。


健康な歯へのあこがれや歯の重要性の認知は、今も昔も変わりません。願う人の意識が強い時には、1年に2回儀式を行ったり、乳歯が生えたばかりの乳児(乳歯がすべて生えそろう歳、永久歯が生え始めた歳にすることもある)に儀式を行ったりしています。


食生活の嗜好の変化により、現代人の歯やアゴは退化してきていると言われています。必要性のないものに対してコンパクトに収まってきている、と考えれば進化とも言えます。ただ、いまの小さな歯やアゴでいきなり固いものをかじると、過負荷になってしまうのは目に見えています。やはり歯がための儀式は形式だけでなめるぐらいがいいのかもしれませんね。


余談ですが、歯がためはかむ訓練をする日ということで、もう一つの歯がための日である6月1日をチューインガムの日と日本の食品業界では定めているようです。今のところシンガポールでは無縁ですが、ガムが解禁になると、歯がためと称したキャンペーンなど開かれるかもしれません。

 

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