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要旨 むし歯がエナメル質を越えると、大きくなりやすくなります。 |
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歯の表面の硬いエナメル質の下には、象牙質と呼ばれる硬い層があります。象牙質は骨よりは硬いがエナメル質よりは軟らかい構造物になっています。象牙質中には無数の管があり、この管はいわゆる歯の神経のある場所につながっています。この管を通して象牙質はみずみずしさを保っていたり、カルシウムなどの結晶成分の補給を受けたり、時には痛みとしてむしばを感じ取ることが出来るようになっています。
象牙質はエナメル質よりも軟らかいため、むしばが象牙質に達すると、むしばは象牙質とエナメル質との境界部分の構造的に弱い部分にも広がりを見せます。さらに象牙質には無数の管があるので、この管を連絡通路として奥へ奥へと進行を始めます。表面のエナメル質が残ったまま、むしばが中で広がり空洞化現象を起こします。この空洞化現象により、歯の色が黒く透けて見えたり、突然歯が陥没して穴が大きくなったりすることがあります。
もちろんこの象牙質にも細菌に抵抗する防御機能があります。先ほどあげたみずみずしさを保つ管には内圧のかかった水分で満たされています。東京ドームの屋根が落ちてこないのと同じ理屈で、神経のある部分に自然に細菌が落下してくるのを防いでいます。
さらにむしばが攻め始めてきていることを、管を通して神経のある部分が気づくことが出来るようになっています。刺激を受けることにより、管の中のカルシウムなどの濃度を高め、象牙質の構造を強固にすることもできます。
しかしながら細菌も増殖の一途をたどるため、象牙質の防御能を越えると、むしばは進行していきます。むしばが進行していくと、歯に痛みを訴えることもあります。そして防御能によりむしばの進行が抑えられると、痛みが和らぐことも知られています。
歯がしみるなどの症状は出現したり、消えたりすることがあります。痛みの症状が消えたことは、自然と虫歯が治ったわけではありません。歯を硬くしてむしばの進行を食い止めようとしているにすぎません。例えるならば、あふれ出そうとしている洪水に対して、ひたすら堤防を築き上げているにすぎないのです。堤防が決壊したら、次の堤防をまた築き始めるというものです。
象牙質内ではいわゆる免疫機能が効率的に働いて原因物質が完全に取り除かれることはありません。原因物質である細菌は増殖を続けていっています。歯医者での虫歯の治療は、増殖した細菌を可及的に取り除き、防御機転の負担を軽くしてあげているのです。あふれかかっている洪水の水を少なくしてあげているわけですね。
Copyright © 2002-2011 by Dr K. Sakurai, Ko Djeng Dental Centre Pte Ltd. All
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K. SAKURAI.
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