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要旨 むし歯が歯の神経に達すると、激しい痛みを伴います。 |
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むし歯が歯の神経と呼ばれるところまで達すると、通常激しい痛みを伴うようになります。何もしなくても、ズキズキと痛むようになったり、冷たい物などを含んでから数分間痛みが続いたり、熱い物がしみるようになったりするようになります。むしばによって歯の神経が直接脅かされていると考えていただいても良いでしょう。
俗に歯の神経と呼ばれているところは、歯科用語では歯髄といいます。歯髄はエナメル質、象牙質の硬い殻に守られている血の通った組織です。強固に守られたいわば過保護の組織であるため、直接刺激を受けると、強い反応(痛みなど)を引き起こします。皮膚や内臓の粘膜に潰瘍が出来て、中の組織が直接刺激を受けると今までにない痛みを感じることと同じです。
歯髄は硬い殻に守られているので、防衛戦を破られ、刺激を直接受けることは別の悲劇を生み出します。例えるならば、外堀(唾液)や堅牢強固な壁(象牙質、エナメル質)を持っていたお城が攻略され、中にいた人たち(歯髄)が逃げられない状態です。また歯髄の血液供給は根の先の直径0.2mm前後の穴のみから受けています。敵が攻めてくる中、援軍は狭い地下通路をくぐってのみでしか、お城の中に入れることが出来ない状態です。
炎症が起きると、通常の組織では発熱・発赤・腫脹などを認めるようになります。発熱はさまざまな反応の活性化により生じる熱、発赤は増大する血液量、腫脹は炎症部位における血管からの滲出液(しんしゅつえき:血液成分)や炎症過程により生じた膿の膨らみを意味しています。歯髄も当然同じ反応を引き起こします。しかしながら硬い殻に囲まれていますので、膨らもうとしても膨らむことは出来ません。そのため中の圧力が高まることになります。圧力が高まると、中の血管を押しつぶすことになります。歯髄は歯の根の先、直径0.2mm前後の穴のみから血液供給を受けている組織です。この部分までも圧迫されると血液は滞りがちになってしまいます。血液は治癒に必要な栄養や細胞を通常送り込むますが、歯髄では必要な物が足りない事態に陥ってしまいます。また熱が溜まっても、熱を冷ますはずの循環装置である血液の流れも滞っているので、熱はどんどん溜まってしまいます。体の反応として、治そうとすればするほど、歯髄にとって逆効果になってしまうのです。例えるならば、城内に追いつめられて、抵抗はするものの、抵抗の結果煙がどんどん充満していき、息が出来なくなってしまうような状態です。
度重なる悲劇を受ける中、歯髄中の神経も過酷な運命にさらされ、激痛が生じることになります。熱いものがしみるが、冷たいものがしみないといった場合は、細かな敏感な神経が死んでしまい、太くてそれほど敏感ではない神経が生き残っている状態です。はじめは激痛だったものが、治まってきた場合、それは歯の神経がすべて死んでいったことを意味します。
歯の神経の治療は、度重なる悲劇に陥った(さらに陥ることになる)歯髄という組織を取り除き、きれいにすることを目的として行っています。
Copyright © 2002-2011 by Dr K. Sakurai, Ko Djeng Dental Centre Pte Ltd. All
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K. SAKURAI.
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