1.はじめに 
2.初期のむし歯(表層脱灰) 
3.エナメル質のむし歯(かるいむし歯)
4.象牙質のむし歯(少し深くなったむし歯)
5.神経に達したむし歯(激痛を感じるむし歯
6.根の先に進んだむし歯
7.極度に進行したむし歯
 
- 6. 根の先に進んだむし歯 -
 

要旨

歯の神経が死んだ後、細菌が依然と存在していた場合、その細菌は歯の根元を通って、歯を支えている骨へと進んでいきます。骨の中で膿が溜まり、その膿が周囲の骨を圧迫して腫れたり、痛みを引き起こしたりします。歯ぐきを通してお口の中へと溜まった膿が出ることもあります。



歯の中の神経・血管は歯の根の先の小さな穴を通して歯の外側とつながっています。いわゆる歯の神経が死んでしまった後、細菌が残っていた場合、上の小さな穴を通して、細菌が骨の中へと侵入していきます。


骨の中には血管や神経が存在しています。穴を通してやって来た細菌に対し、細菌を駆除しようと白血球などが奮戦し始めます。しかしながら歯の中にまでは血液が通っていないため、効果的に細菌の本陣を攻めることは出来ません。白血球が戦っても戦っても、細菌達は増殖したのち穴を通って骨の中に入ってきます。やがて細菌と白血球の戦いは終わりのないものへとつながっていきます。戦いの後、壊死した組織、細胞が膿となります。残った細菌により膿の周りが発酵すると、腐った臭いを伴い始めます。


白血球などはすべての細菌を根絶することは出来ませんが、なるべく被害が拡大しないように防衛戦を張るようになります。防衛戦線上では、たえず細菌と白血球が小競り合いをしている状態です。この状態を平衡状態と呼び、細菌の力と自分の抵抗力とのバランスが保たれている膠着状態です。バランスが保たれている状態では、ふつう痛みを伴うことはありません。ただ膿が出来ているため、重い感じ、はっきりとしない感じがすることがあります。歯を支えている骨がなくなり、しっかりと支えていないため、歯をたたくとひびく感じがすることもあります。


細菌が増え始めたり、自分の体の調子が悪くなったりすると、この平衡状態が崩れます。細菌が増え始めると当然病態は悪くなっていきます。自分の体の調子が悪くなると、細菌の力が相対的に勝ってしまいますので、これも病態を悪くしてしまいます。病態が悪くなり、膿がさらに溜まり始めると、骨を圧迫して痛みを訴えるようになります。溜まった膿が歯ぐきの近くで膨れたり、膿が歯ぐきを通して外に出ていったりすることもあります。膿が外に出ると、骨にかかる圧力が緩和するため痛みは消えていきます。しかしながら原因は根の先に残され住み続けている細菌ですので、膿が出ても完治することはありません。しばらくの間白血球の負担が減って、楽になっているにすぎないのです。


根の治療は根の先に巣くっている細菌の元(感染源)をきれいに取り除き、細菌の温床部分をなくすことを意図して行っています。

 

前に戻る    次へ

Home

Copyright © 2002-2011 by Dr K. Sakurai, Ko Djeng Dental Centre Pte Ltd. All rights reserved.
All articles, including photos, illustrations and animations, are produced by K. SAKURAI.
記事についてのお問い合わせはメールにて対応致します。